静電エネルギーのさまざまな表現方法2_2個の電荷からN個の電荷へ

コンデンサ

前回は、静電エネルギーをさまざまな形で表現できることを説明しました。ここからは、それらの表現の間の関連性を、式を変換していくことで説明します。

2個の電荷が持つエネルギー

\(U = \dfrac{Qq}{4\pi \epsilon_0 r}\)

出発点は、2個の電荷が持つエネルギーです。静電場におけるエネルギーを考えるうえで、最もシンプルな形です。

さて、この式がなぜエネルギーを示すのか。この点を理解しておくことが必要です。そのためには、次の3点を理解しておくことが必要です。

1. ふたつの電荷の間に静電気力が働くこと

静電気力は、クーロンの法則にしたがってふたつの電荷の間にはたらく力です。真空中で、距離がrだけ離れた電荷Qと電荷qの間にはたらく力は次の式で表されます。

\(F = \dfrac{Qq}{4\pi \epsilon_0 r^2}\)

力は電荷間の距離の2乗に反比例し、電荷の積に比例します。この法則は、実験的に見出した経験則です。しかしながら、静電場を考える限りはかなりの精度で成り立つことが確認されています。

2. 静電気力が場所のみの関数であること

静電気力を表す式は、電荷qと、電荷Qによる電場の積でもあります。電場は場所の関数なので、静電気力も場所の関数です。このことは、電荷の位置エネルギーを考えるうえで必要な条件です。

3. 静電気力が保存力であること

エネルギーは力を距離で積分したもの、すなわち仕事の分だけ増える量です。ここで、積分経路が問題になります。ある地点Aから別の地点Bへ移動する場合を考えます。このとき、1次元なら経路はひとつしかありません。これが2次元になると、経路が無数に増えます。始点と終点が同じなのに、経路によって仕事量が異なると、エネルギーは定義できなくなってしまいます。そこで、仕事が経路に依存しないことが、エネルギーを定義できる条件になります。このような力を保存力と呼びます。静電気力も保存力です。

では、上記3点に基づいてエネルギーを考えていきます。

静電気力が保存力であり、場所のみの関数である場合、次の式で力に対応するエネルギー\(U(r)\)を定義できます。

\(F(r) = – \dfrac{d}{dr} U(r)\)

\(F(r) = \dfrac{Qq}{4\pi \epsilon_0 r^2}\) なので、この式で対応する\(U(r)\)は \(U(r) = \dfrac{Qq}{4\pi \epsilon_0 r}\)です。これが2個の電荷が持つエネルギーです。

ちなみに、電位とは、このエネルギーを試験電荷で割って、単位電荷あたりに直したものです。

N個の電荷の集合体が持つ位置エネルギー

では、電荷の数を増やしていきます。ここでは、重ね合わせの原理を利用します。

最初に2個の電荷(\(q_1\)、\(q_2\))が\(r_{12}\)だけ離れて存在しているとき、このふたつの電荷が持つエネルギーは\(U=\dfrac{q_1 q_2}{4\pi \epsilon_0 r_{12}}\)です。
そこへ、3個めの電荷(\(q_3\))をこれらふたつの電荷へ、無限遠からゆっくり近づけます。\(q_1\)と\(q_3\)の距離を\(r_{13}\)、\(q_2\)と\(q_3\)の距離を\(r_{23}\)とすると、\(q_3\)を移動させるのに必要な仕事は、\(q_2\)が無いと仮定して計算した結果と、\(q_1\)が無いと仮定して計算した結果の和になります。

\(q_2\)が無いと仮定した場合のエネルギーは、

\(U = \dfrac{q_1 q_3}{4\pi \epsilon_0 r_{13}}\)

q1が無いと仮定した場合のエネルギーは、

\(U = \dfrac{q_2 q_3}{4\pi \epsilon_0 r_{23}}\)

もともとあった\(q_1\)と\(q_2\)によるエネルギーと合わせると、

\(U = \dfrac{q_1 q_2}{4\pi \epsilon_0 r_{12}} + \dfrac{q_1 q_3}{4\pi \epsilon_0 r_{13}} + \dfrac{q_2 q_3}{4\pi \epsilon_0 r_{23}}\)

このような感じで電荷の数をどんどん増やして行くことを考えます。電荷の数は増えても、考えるのはふたつの電荷間のエネルギーだけです。上の式で項目を増やしていき、電荷がN個まで増えた場合のエネルギーは、次の式で表すことができます。

\(U = \dfrac{1}{2} \displaystyle \sum_{i=1}^{N} \sum_{j=1}^{N} \dfrac{q_i q_j}{4\pi \epsilon_0 r_{ij}}\)
ただし、\(i=j\)は除く。

この式は、電荷\(q_i\)と電荷\(q_j\)間のエネルギーを計算する式です。\(i\)と\(j\)を1からNまで順番に数字を増やしながら、エネルギーの和を計算します。\(1/2\)がついているのは、同じエネルギーを2回ずつ計算するからです。例えば、\(q_4\)と\(q_7\)のエネルギーを計算する場合、i=4とj=7のケースと、j=7とj=4のケースの両方でエネルギーを計算してしまうので、最後に2で割る必要があります。

次回以降、式の変換を進めていきます。

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