コンデンサにおける誘電体の分極2_分極による誘電体の表面電荷密度と分極ベクトル

コンデンサ

前回は、分極のイメージについて説明しました。今回は、分極と電場の関係について説明します。

まず、原子(分子)の分極による誘電体の表面電荷密度を求めます。これを用いて誘電体の微視的な分極を巨視的な表現へ変える流れを説明します。

分極による誘電体の表面電荷密度

表面電荷密度は分極した誘電体の表面に現れる電荷密度のことです。これを求めることで、誘電体全体の分極の大きさを求めることができるようになります。

誘電体を電場の中に置くと、誘電体を構成する原子が分極して、プラスとマイナスの電荷の中心が距離\(d\)だけズレます。ここでの例として、プラスの電荷を持つのが原子核、マイナスの電荷を持つのが電子とします。すると、原子核は位置が固定されたまま、電子だけが距離\(d\)だけ動いた(電子は原子核と比較して非常に軽いので)と考えることができます。このとき、誘電体の一端ではプラスの電荷だけの領域が生じ、反対側ではマイナスの電荷だけの領域が生じます。誘電体の断面積を\(S\)とすると、これらの領域の体積は\(Sd\)です。

また、誘電体の単位体積あたりの原子数を\(n\)、原子が分極した時に\(+q\)と\(-q\)の電荷に分極するとすると、誘電体内の電荷密度\(\rho(C/m^3)\)は\(\rho=\pm qn\)です。

以上をまとめると、誘電体表面に現れる電荷量は次の式で表されます。

\(\rho Sd = \pm q n Sd = \pm p n S\)

第一辺は、プラス電荷またはマイナス電荷だけの領域の電荷量を、電荷密度と領域の体積で表しました。第二辺では電荷密度を原子数と電荷に分解しました。\(qd\)は電気双極子モーメントの大きさを表すので、これを\(p\)で表したのが第三辺です。

ここで求めたかった、誘電体の表面に現れる電荷密度\(\rho_{P}\)は、この電荷量を誘電体の断面積\(S\)で割ることで求めることができます。

\(\rho_{P} = p n\)

ベクトルで表す分極

分極と電場の関係を考える場合、電場はベクトルなので、分極もベクトルで表す必要があります。上記の表面電荷密度に含まれる\(p\)は電気双極子モーメントの大きさですが、これをベクトル表記にすれば、表面電荷密度\(\rho_P\)がベクトルになります。これを\(\vec{P}\)で表します。

\(\vec{P} = \vec{p}n\)

これで巨視的な分極をベクトルで表すことができました。この\(\vec{P}\)は単に分極と呼ばれますが、ベクトルとわかるよう、ここでは分極\(\vec{P}\)と表記します。分極\(\vec{P}\)の単位は、電気双極子モーメントの単位\(C \cdot m\)に\(m^{-3}\)をかけるので、 \(C/m^2\)です。

この分極\(\vec{P}\)の大きさは\(\rho_P\)と等しく、その向きは電気双極子モーメントの向きと同じです。

まとめ

誘電体の微視的な分極を巨視的な表現へ変える流れを説明しました。微視的⇒巨視的へ変換するときに大事なのは、原子(分子)ごとに挙動が異なるとしても、平均値で代表させる、ということです。ここで述べた分極\(\vec{P}\)を電場と関係づけていくわけですが、この点については次回説明します。

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